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抄読会(早発卵巣不全の遺伝的要因に着目した研究論文)

2025.9.26

Tang S, Guo T, Song C, et al. MGA loss-of-function variants cause premature ovarian insufficiency. J Clin Invest. 2024;134(22):e183758. Published 2024 Nov 15. doi:10.1172/JCI183758

 

2025年8月29日の夕方に医局で抄読会が行われました。

奈良医大産婦人科では毎週金曜日に抄読会を行い、最新の知見について共有・議論しています。

山田先生が早発卵巣不全の遺伝的要因について発表されました。

 

早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency, POI)は卵胞の早期の枯渇により40歳未満で卵巣性無月経に至る病態で、頻度は約1%です。原因には、抗がん剤や放射線治療、卵巣手術などの医原性や、染色体の変化など要因のはっきりしたものもありますが、半数以上は原因不明であるとされています。原因不明の中には、未知の遺伝子変異の関与も示唆されています。今回の抄読会では、POIの遺伝的要因に着目した研究論文を紹介しました。

 

要旨:早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency, POI)は女性不妊・不妊傾向の一般的な原因であり、遺伝的要因の関与はよく知られている。しかし、現在までに同定されている遺伝因子は症例の一部しか説明できない。この研究では、中国のPOI患者1,027例と民族的にマッチさせた健常女性対照2,733例を対象に、エクソームワイドかつ遺伝子単位の症例対照解析を行った。その結果、MAX二量体化タンパク質(MGA)のヘテロ接合LoF変異が患者群で有意に集積しており、POI症例の2.6%であった。一方で、対照群にはMGA LoF変異は認められなかった。さらに、中国2コホート、米国2コホートを対象とした追試解析を行ったところ、それぞれのPOI症例で 1.0%、1.4%、1.0%、1.0% にMGA LoF変異を認めた。最終的に、本研究全体(合計1,910例のPOI症例)から、38例に37種類のMGA LoF変異が同定され、全体の約2.0%であった。また、Mga+/−雌マウスは妊孕性低下を示し、繁殖寿命が短く、卵胞数も減少していた。これはヒトで観察された表現型と一致していた。本研究は、MGA欠損が女性の生殖能低下に必須の役割を持つことを示している。