産科 Obstetrics

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概要

総合周産期母子医療センター

 当院は総合周産期母子医療センターとして、新生児科・小児外科・麻酔科・放射線科など各部門と密接に連携して、正常妊娠に加え、妊娠高血圧症候群、早産、多胎妊娠、妊娠糖尿病、前置胎盤などの母体合併症や胎児発育不全、胎児奇形などの胎児合併症にも対応しています。適切な母体・胎児管理から出産後の新生児治療・管理に繋げています。妊娠と分娩の経過において母体や胎児に予期せぬ緊急事態が発生する事があります。例えば、胎児の状態が急に悪くなった場合、できるだけ速やかな分娩が必要となります。分娩時の大量出血で母体に生命の危険がおよんだ場合には、輸血、子宮動脈の塞栓術などの止血処置や子宮の摘出が必要となることがしばしばあります。当院は24時間対応できる産科救急体制をとり他院からの紹介・母体搬送も多く受け入れています。

胎児エコー

 当院では胎児発育不全、胎児奇形などの胎児合併症にも対応しています。胎児異常が疑われる場合や、他院よりご紹介いただいた患者様に対し、胎児エコー外来での精査を行っております。診断後に不安を解消し出産に臨んでいただくよう、必要に応じて各専門医(新生児科、小児循環器科、小児外科など)との出生前面談(Prenatal visit)も行っております。胎児治療として、胎児胸水に対する胎児胸腔・羊水腔シャント術を開始しました。胎児治療についての詳細は下記リンクをご覧ください。

 また、当院は2013年12月より「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(新型診断:NIPT)」の認定施設(基幹施設)です。出生前診断についての詳細は下記リンクをご覧ください。

 合併症を有する妊婦さんに対する医学的適応の無痛分娩も実施しています。無痛分娩についての詳細は下記リンクをご覧ください。

施設認定(周産期領域)

  • 日本産科婦人科学会総合型専攻医指導施設
  • 総合周産期母子医療センター
  • 日本周産期・新生児医学会基幹施設
  • 日本超音波医学会専門医研修施設
  • 母体保護法指定医認定研修機関
  • 臨床遺伝専門医制度認定研修施設

プレコンセプションケア

 プレコンセプションケアとは、女性とパートナーが妊娠前から将来の妊娠を考えて準備するための健康管理について情報提供しようという考え方です。当院では2022年8月から慢性疾患を有する女性を対象として、「プレコンセプションケア外来」を開設しました。慢性疾患は、妊娠・出産・児を含めた周産期予後に影響する可能性があるため、プレコンセプションケアによって、①患者さん自身が知識を得て本当に望む人生を積極的に選択することができるよう、②病態の安定した時期に計画的に妊娠できるよう、サポートしています。疾患が妊娠に与える影響、妊娠が疾患に与える影響、治療が妊娠に与える影響について、より理解していただき不安が軽減されるよう、またよりよいお身体の状態で妊娠に臨んでいただけるよう、疾患のかかりつけの先生と協力体制を整えています。当院はプレコンセプションケア外来を開設している県内唯一の施設であり、県内全域の患者さんに対応しています。

妊娠と薬

 「妊娠と薬外来」は、厚生労働省の「妊娠と薬情報センター」事業の協力病院として設置したもので、妊娠と薬の専門の医師・薬剤師が相談に応じる外来です。

「持病があって薬を飲んでいるが、このまま妊娠していいのかな?」
「薬を飲んだまま授乳して赤ちゃんに影響がでるのでは…?」

 等、お悩みの方は、妊娠中や授乳中の薬に関する相談を受けていただくことができます。 詳細や受診ご希望の方は下記リンクをご覧ください。

NIPT

 母体の血液を用いて胎児の染色体を調べる非確定的遺伝学的検査です。流産リスクのある羊水検査等と異なり母体の採血のみで行えるので、「無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic test);NIPT」と呼ばれています。
 対象となる疾患は、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つの疾患です。
 母体と胎児にとって安全で簡便な検査なのですが、対象疾患や検査でわかることの限界、検査の方法や意義・結果の解釈やその後の選択肢などをよく考えていただき、ご夫婦にとって有用と判断された上で検査を受けて頂くことが重要です。検査を受けるには事前に遺伝カウンセリングを受けていただくことが必要です。

カウンセリング

  • 妊娠14週5日までにご夫婦/パートナーと2人でのカウンセリング(30分以上、6,130円)
  • お二人に十分考えて頂く時間を持つため、同日の採血は施行できません。検査を受けられる場合、後日採血日をお電話頂きます。また受けない選択も可能です。

検査

  • 妊娠10週0日~14週6日に外来で採血(検査費用:161,990円)
  • 14日前後で回答。結果の説明(3,780円)
  • 判定保留(1%以下)の場合は直ちに再検査を行います(無料です)
  • 検査陽性の場合は確定診断として、羊水検査が必ず必要です(当院で行います)

お問い合わせ・お電話

 カウンセリング・検査をご希望の方は、下記までお電話いただき、予約させていただきます。

奈良医大附属病院・遺伝カウンセリング外来

受付時間:月曜日から金曜日の午後2時~午後5時

電話番号:0744-29-8880(遺伝カウンセリング外来専用)

無痛分娩

 当院では合併症を有する妊婦さん(心臓、血管、脳のご病気など)や、無痛分娩希望の妊婦さんに対し、硬膜外鎮痛法による無痛分娩を行っています。ご希望の方は、産婦人科外来受診時にお申し出ください。

当院での無痛分娩

  • 当院では妊娠38-39週頃に、計画的に入院し陣痛を起こして麻酔を導入する方法(計画無痛分娩)を行っています。
  • 麻酔科医が無痛分娩を実施・担当しており、妊娠中にご家族同伴での麻酔科受診が必要です。
  • 28週以降の毎回の妊婦健診時に助産師外来の受診が必要です。
  • 無痛分娩を希望されても母児の合併症等により行えない場合があります。
  • 費用は出産費用+120,000円~(自費)+入院費用(計画入院から分娩までの期間も入院費用が発生します)をいただいており、無痛分娩を開始した時点で費用が発生します。

胎児治療

 現在、日本で保険収載されている胎児治療は4つあります。

① 胎児貧血に対する胎児輸血

② 一絨毛膜双胎における双胎間輸血症候群やselective IUGR type 2 または 3 に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術

③ 一絨毛膜双胎における無心体双胎に対するラジオ波凝固術

④ 胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術

 このうち当院では④を実施することができます。

胎児胸腔-羊水腔シャント術について

 胎児胸水を認めた場合、まず診断と治療をかねて胸腔穿刺による胸水吸引・除去を行いますが、1週間以内に再貯留する場合は重症例と考え、シャント術の適応と判断します。
 シャント術は胎児の胸腔内に貯留した水分を羊水腔へ排出することを目的とした治療で、経腹超音波ガイド下に行います。母体腹壁から子宮内の胎児胸腔内へカテーテルを挿入し、胎児胸腔と羊水腔が交通するようにチューブを胎児胸壁に留置して、持続的に胸水が羊水中に流れるようにします。胸水が減ることで胎児の肺が膨らみ、肺低形成を防ぐことができます。また、心臓の圧迫が減ることで循環障害の改善も期待できます。赤ちゃんのシャントチューブの抜去は、分娩後に小児科・小児外科にて行います。

 処置中の疼痛や子宮収縮、また胎児が動くことによる穿刺困難を防ぐため、麻酔科により脊髄くも膜下麻酔や静脈麻酔を施行します。

シャントチューブ シャント術