抄読会(子宮内膜病変の子宮鏡下手術を用いた妊孕性温存療法)
2026.10.14
2025年9月24日の夕方に医局で抄読会が行われました。
奈良医大産婦人科では毎週金曜日に抄読会等を行い、最新の知見について共有・議論しています。

福井先生がAEH(子宮内膜異型増殖症)と早期子宮内膜癌に対する子宮鏡下手術を用いた妊孕性温存療法の管理について最新のイタリアのグループの論文を取り上げました。
本研究は、AEHおよびGrade 1、2の早期子宮体がん(EC)患者に対する、標準化された子宮鏡下切除術とプロゲスチン療法の併用による妊孕性温存治療の腫瘍学的・生殖アウトカムを評価した後方視的コホート研究です。
【対象・方法】
2021〜2024年に受診した138例(AEH 79例、EC 59例)を対象としました。AEHには組織回収デバイスによる「Visual D&C」、局所ECには15-Frミニレゼクトスコープによる「3ステップ法」、びまん性ECには両者を組み合わて実施し、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUD)や酢酸メゲストロール内服を併用しました。
【結果】
完全奏効率はAEH群 94.9%(74/78)、EC群 98.2%(55/56)であり、両群間で有意差を認めませんでした(p=0.30)。CR到達期間の中央値は両群とも6か月でした。
再発率はAEH群 16.7%、EC群 26.8%(p=0.16)でした。
予後因子の多変量解析において、35歳以上がCR率低下(OR 0.37, p=0.03)および再発リスク上昇(OR 3.80, p=0.01)に関連する唯一の独立因子でした。病変の重症度(ここではAEH vs EC、局所 vs びまん性、Grade 1 vs 2)はアウトカムに影響しませんでした。
CR達成後に妊娠を試みた71例において、臨床妊娠率はAEH群 47.5%(19/40)、EC群 54.8%(17/31)でした。
【結論】
病変に応じた子宮鏡下切除を行うことで、高い奏効率と良好な妊娠率が得られます。一方、患者年齢(35歳以上)が治療反応性および再発に最も影響する重要因子でした。
なお、当院では高度生殖医療センターを開設しており、不育症の治療をはじめ、性分化異常、排卵障害、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など患者さんに対してその将来の妊娠や健康のために機能を維持するための診断と治療を行っています。
特に不妊症、不育症に関しては、毎年のようにエビデンス(医学的な根拠)のある新しい診断方法、治療方法が開発されていますが、信頼性の高いものを取捨選択し提供するとともに、大学に申請し許可を得た(実施体制を含む安全性と有効性あるいはその可能性について審議され許可をされる)後に奈良県立医科大学独自の臨床として新しい取り組みを行っているものもあります。