【海外留学連載】サンディエゴで得られたもの
2026.7.30
奈良県立医科大学産婦人科の三宅龍太です。
2023年8月に渡米してから、まもなく3年がたちます。
研究生活については前回の記事でご紹介しましたので、今回は研究以外の面に目を向け、サンディエゴでの生活を通して得られたものを振り返りたいと思います。
自分自身について
健康を取り戻す
アメリカでの生活が始まり、まず実感したのは、十分な睡眠をとることの大切さでした。
日本で勤務していた頃とは異なり、留学中は当直がありません。毎日ある程度決まった時間に眠ることができ、1日3食そのほとんどを自分たちで作って食べる生活になりました。
適度に運動する時間も確保できるようになり、生活を重ねるにつれて、心身ともに健康を取り戻していくことを実感しました。
忙しい日々の中では後回しにしがちですが、睡眠、食事、運動という基本的な生活習慣が、健康に与える影響の大きさを改めて感じています。
趣味を広げる
海外留学中の過ごし方は人それぞれです。日本で続けていた趣味を楽しむ方もいれば、留学をきっかけに新しいことに挑戦する方もいます。
私もサンディエゴ滞在中、さまざまなことにトライしました。
ゴルフ、水泳、コーヒー、クラフトビール、ワイン、キャンプ、ボディボード、新聞、政治、読書、テレビゲーム、ポッドキャストなどです。
サンディエゴは年間を通して温暖で、雨の日も少ないため、屋外での活動を楽しみやすい環境です。休日にゴルフや水泳をしたり、家族でキャンプや海へ出かけたりと、日本にいた頃にはなかなか確保できなかった時間を過ごすことができました。
新しいことを始める余裕が生まれたことも、留学生活で得られた大きな変化の一つでした。
日本とのつながりを通じた仕事
留学中は日本で臨床を行う機会はありませんでしたが、これまでのつながりを通じてオンラインで仕事をさせていただく機会にも恵まれました。
これまでに携わった主な活動は、以下のとおりです。
- 日本産婦人科超音波学会「超ベーシックセミナー」の運営(3回)
- 日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン」妊産婦の蘇生に関する作業部会
- 産婦人科関連書籍の共同執筆(2回)
海外にいながらも、日本の産婦人科医療や教育に関わる機会をいただけたことは、とてもありがたい経験でした。
JKT Young Doctor’s Conferenceへの参加
日本産科婦人科学会が開催する、韓国および台湾の若手産婦人科医との国際交流会「JKT Young Doctor’s Conference」に参加させていただきました。
約1週間、日本・韓国・台湾の若手医師と交流し、産婦人科医療や研究について意見を交わしました。
そこで知り合った先生方とは、現在も国際学会に参加する際などに連絡を取り合っています。海外の同世代の医師とのつながりを持つことができたことも、留学中に得られた貴重な財産です。
家族について
家族と過ごす時間
留学生活では、家族と過ごす時間が大きく増えました。
毎朝子どもたちを見送り、朝夕の食事を家族そろって食べ、休日には一緒に出かけることができました。
日本で臨床をしていた頃には、当直や休日勤務などで家族全員がそろって過ごすことが難しい日も少なくありませんでした。サンディエゴでは、毎日の何気ない時間を家族で共有することができ、家族としての結束がより強くなったように感じています。
妻の研究室勤務
ビザの種類によっては、所定の申請を行うことで、配偶者もアメリカ国内で就労することができます。
妻もその制度を利用し、UC San Diegoの病理学教室でdry labおよびwet lab workに携わる機会を得ました。
私だけでなく妻もアメリカの研究環境を経験し、夫婦で同じような挑戦や発見を共有できたことはとても貴重でした。海外留学が自分一人の経験ではなく、家族全体の経験になったことをうれしく思っています。
家族での旅行
留学中には車での長距離ドライブを中心に数多くの国立公園や観光地を訪れることができました。
グランドキャニオン、ラスベガス、ロサンゼルス、モントレー、セドナ、ザイオン、ブライスキャニオン、モニュメントバレー、ジョシュアツリー、ワシントンD.C.、ニューヨーク、ナイアガラの滝など、アメリカならではの雄大な自然や都市を家族で体験しました。
目的地そのものはもちろんですが、長時間のドライブや途中で立ち寄った街、予想外の出来事も含め、すべてが家族の思い出になっています。
パパ友・ママ友とのつながり
子どもたちが通う小学校には多くの日本人家庭が在籍しており、日本各地から留学に来ている医師や研究者のご家族と知り合うことができました。
医師同士のパパ友、ママ友として、子育てや留学生活について情報交換をしたり、家族で一緒に出かけたりする機会にも恵まれました。
出身地や専門分野、所属施設は異なりますが、同じ時期に海外生活を経験した仲間として、今後も連絡を取り合い、日本帰国後に再会する予定もあります。
環境を変えることで見えたもの
今回の留学では、日本と海外、臨床と研究という、これまでとは大きく異なる環境に身を置きました。環境が変わることで、自分の考え方や物事の見方も大きく変化したように感じます。
特に大きかったのは、競争心を向ける対象が、自施設内や身近な人ではなく、他施設、さらには世界へと広がったことです。
異なる国や文化、研究環境の中で働くことで、これまで自分が当たり前だと思っていた価値観を見直す機会が増えました。同時に、日本で培ってきた臨床経験や人とのつながりの価値にも改めて気づくことができました。
そして何より、この経験を家族で共有できたことはかけがえのない財産です。
私自身も幼少期の一時期を海外で過ごしました。自分の子どもたちにも海外で生活する経験を伝えることができ、世代を超えて同じような体験を共有できたことをとてもうれしく思っています。
帰国に向けて
以上、研究以外の面から、サンディエゴでの約3年間を振り返りました。
私は2026年8月中旬に日本へ本帰国し、奈良医大での勤務を再開する予定です。
海外留学は、研究成果を得るためだけのものではありませんでした。健康、趣味、人とのつながり、家族との時間、そして自分自身の価値観など、多くのものを得ることができました。
留学を検討されている先生方や、海外生活に興味を持っている方がいらっしゃれば、今回の経験について、いつでもお話しさせていただきたいと思います。
最後になりましたが、この貴重な機会を与えてくださった奈良医大産婦人科学教室の先生方、留学生活を支えてくださった皆さま、そして一緒にアメリカでの生活を歩んでくれた家族に、心より感謝申し上げます。